シーラッハさん初読み
海外ミステリを探していて見つけたドイツのミステリで弁護士さんが自身が扱った事件を淡々と語るとの体裁で短い物語が収められていてかなり面白く読ませる
実に様々な事件を様々な人間が起こすが現実からかけ離れているようでいてなんとなくありそうな気もして少し不思議な感覚になる とにかく面白い、傑作と言っていい
特に印象に残った作品は緑 ラストになぜこんなにドキリとしたのか オチてるわけでもないんだけど鋭くキレてる
棘も警備員が数字にこだわるあたりは自分にも理解できるだけに少し怖くて印象深い
フェーナー氏
温厚な医師が年老いて遂に悪妻の頭を斧で割って殺す 結婚したとき妻を絶対捨てないと約束していたことを守っていたが遂にキレてしまった
タナタ氏の茶盌
裕福な日本人の家に空き巣に入り金庫ごと盗むと中には大金と一緒に茶盌があった 茶盌を取り戻すため多くのギャングが殺されやがて空き巣は茶盌を返す
チェロ
子どもたちを上手に愛せない父を持つ姉弟 二人は家を出旅に出るが弟は事故に遭い不随となり長期の姉の看病空しく体の機能が失われていく 姉は弟を殺し自らも拘置所で自死しそれを知った父親も自死する 姉は優れたチェロ奏者だった
ハリネズミ
犯罪者一家の末っ子は極めて優秀で金も稼いでいたが一家には秘密にしていて無能と思われていた ある時強盗した兄を巧妙にかばい無罪を勝ち取るが一家は依然として末っ子が優れていることに気付かない
幸運
女は自宅で売春していたが客が心臓麻痺で死ぬ 彼の帰りを待つため外出した間に戻った彼は彼女のため死体をバラバラにして捨て逮捕される 殺人ではなく罪は死体損壊だけだがそれも彼女を守るためと弁護士は主張し釈放され2人は幸福になる
サマータイム
若い女性と金で関係を持っていた男が女性殺害容疑で逮捕されアリバイを主張するがカメラの写真の時刻でアリバイは崩れる しかサマータイムの関係で時刻はずれていることがわかり無罪となる
正当防衛
駅で絡んできた男2人を瞬殺した男は逮捕されるが黙秘を貫き身元も不明のまま正当防衛でやがて釈放される 逮捕前にプロの仕事と思われる殺人事件があったが犯人は捕まらないまま
緑
人の顔が数字に見える青年は悪魔である羊を殺し目をくり抜くことを繰り返し少女殺害の疑いで拘束されるが無実だった 青年は精神病院に入る 自分の数字を問われ緑と答える
棘
博物館の警備員は変化を持たせるため数年おきに配置転換させるが事務のミスにより長年一箇所で勤務していた男が精神を病み展示の彫刻を破壊し博物館は訴えるがミスの発覚を恐れ取り下げる
愛情
女性を愛するあまり食べたくなってしまう男 精神病院受診を強く勧めるが拒みやがて殺人事件を起こす
エチオピアの男
孤児として生まれ厳しい境遇で育った男は銀行強盗の末外国に逃げ病で死にかけるが何とか回復し現地の村で農業を手伝い成功し妻子を得村人の信頼を集めるが母国に連れ戻され服役し仮出所後さらに罪を重ね 裁判では重罪が予想されたが村の知り合いが来て証言してくれ軽い刑期となり出所後村に戻り幸せに過ごす