2024年9月30日月曜日

春泥歌


赤江瀑さんの短編集は5篇くらいのものと10篇くらいのものに分かれるようで これは後者 
ごく短いものもありそれはかなり幻想性が高くなるように感じる やや軽さも感じるがこれこそ赤江さんの真骨頂なのかもしれない その「春眠」のラストシーンが強く印象に残った 貧しさと恨みと哀しさに満ちた「金欄抄」も良かった

春泥歌
行方知れずの子を想い遍路に出る祖母から幼い男子を残し身を投げた遍路の話を聞きその子が鳴らす鈴の音が夢に出て会うことを夢見る孫だが男の子も翌日死んでいたことを知る
砂の眠り
学生時代の友が殺してしまった娘をバラバラにして砂浜に埋めた高校教師は 五年おきにその場所の確認の旅に出るが、埋めた人骨が2つあり驚愕 娘の婚約者が友に復習し埋めた骨だったがその男は同僚の教師だった
春眠
潮が引くと陸になる潮間帯から想う男を見続ける女 長い時間の中で陸の時間も短くなり今はほんの一瞬男の墓を見れるだけ
オオマツヨイクサよ
高校生の若者が聞くラジオから流れるサスペンス 電車にひかれて死んだ酔っぱらいは 女性を襲おうとしていたのか、若者はそれを助けようとしていたのか 家にいたはずなのに服に付着したオオマツヨイクサの謎
春の寵児
古い城下町の路地は見つけたくても見つからないが歩いているとふと迷い込む 子供がスケッチし男女が交歓し鎧武者が現れる
朝の廊下
花の師匠がその女友達と共に若い男たちとの恥態にふける 初めての快楽に落ちたが相手の男が友達と先に寝ていたことを知り怒りのあまり展覧会用の花を切り捨てる
平家の桜
青年が3浪の末志望校に合格し入学前の旅に出て温泉旅館に泊まる。そこで知り合った学生に近くに桜の名所があると聞き、実際に桜はないものの青年はその地を終焉の地と決め、桜が見えるのを待ち続ける
耳飾る風
幼馴染の女子の自殺を助けた話を小説にしてほしいと教師に告げる中学3年の男児 女子は自殺していなかったが後に行方不明になっていた 気づくと男児は女子の骨で作ったという耳飾りを身に着けていた
虚空の馬
みかん箱に入れられ海に捨てられた男 施設も飛び出し上手く生きていけず 助けてくれた男が死ぬ前に話していた幻の馬と暮らすようになる
金欄抄
貧しい生活の中鶏卵を盗み打ち据えられ大怪我をして以来痴呆となった息子 高齢で寝たきりになった母に長持ちの貴重な能装束を見せ痴呆ではないことを知らせる 母は貧してもそれを売らなかったことを責められていると思い絶食の末死ぬ

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