2025年3月22日土曜日

十二宮の夜


赤江瀑さん
幻想的な表題作が質量ともに一番 他は本当に短い短編が並ぶ
奏でる艀 のような 実は死んでいたという作品は他にもあった そういう意味では白骨の夏に出てくる オオマツヨイグサも全然 別の作品にはなってるが作者にとっては同じく死の匂いがする景色なんだろう 晩年の作品集に出てくる閨秀作家もでてきますね

春の鬣(たてがみ)
少年を描けない老画家 公園の馬を題材に絵を描く中学生を知り密かにポルノを与え快楽にふける彼を遠くから覗き絵にする
奏でる艀(はしけ)
子供の頃母と船に乗った思い出 明るい月の光を見続けていては気が狂う 赤ん坊の時に針糸を通すと元気に育つ 母の死後35年墓参りに再び 船に乗り夫とは互いに憎み合いながら も離婚せずにいると船頭に話す 墓地に着き僧侶に遺骨を渡す船頭 彼女は死んで母のもとに帰ってきたのだった
驕児
妻を捨てても助手を選んだ、仕事に疲れ自殺を口にする芸術家
火器なれば
書けなくなった閨秀作家 自分の殻を破る作品をずっと構想していたが編集者に勧められるまま死んだ夫を書く それは書きたい作品ではなく破棄しようと悶々とするが 推敲を重ね傑作となる その原稿は彼女を恨んでいることを隠し家を手伝っていた女に燃やされる
夜光杯の雫
妻と憎悪しあう関係 となってしまった男を 学生時代に助けてくれた友人が家の近くで殺されていたのを発見 落ちていた拳銃を持ち帰る 妻に向け使うか?
白骨の夏
オオマツヨイグサの群落の浜辺でひと夏を過ごすことになった学生は旅回りの役者の子に生まれ 淫蕩な生活を嫌い 家を出て性欲を厳しく律していたが 性技に戯れている男子を家のテラスで見つけ 寝起の混濁する意識の中2人を火かき棒で打ち殺す
桃源
子ができないことを悩む姉は夫が自分を抱かないと 密かに言いふらし夫は悩み やがて首をくくる その姉も老いて妹すら分からないが姉への憎しみは消えない 姉は桃源郷の境地なのか
闘牛場は影
公園で後をついてきてすぐ関係を持った女は男を新婚旅行のスペインで見た闘牛士と信じているが翌日 他の男を闘牛士と信じ離れていく
十二宮の夜
過去に占星術に取り憑かれた女 結婚の祝いに昔の男が作ったガラスの12宮の屏風を贈られ それに魅入られそこに子供を見る 夫は屏風を破壊し子供は消えていくが同時に女は流産する

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