2013年3月13日水曜日

ローマ人の物語3 勝者の混迷


塩野さんのローマ人、単行本ベースの第3巻。文庫だと6・7になります。

塩野さんの本にはそれなりに考えさせられる言い回しがある。
「多くの普通人は、自らの尊厳を、仕事をすることで維持していく。ゆえに、人間が人間らしく生きていくために必要な自分自身に対しての誇りは、福祉では絶対に回復できない。職をとりもどしてやることでしか回復できないのである。」
これなんかう~んと思いました。

しかし一方でびっくりするときもあって、
「経済構造の変化に棹さす考えを持っていたのではない。変化の波に、乗ろうとしたのである。」
この「棹さす」の用法は明らかに間違いだよなあ。物書きがこんな間違いをしていいのかな、新潮の編集は何をやってるんじゃ??
不思議な作家。歴史の研究家としては立派だけど物書きとしてはアマチュアなのかもしれない。
ま、私は好きだから良いんですけど。

ローマが内部でもめていく本書は読んでいて楽しくないですね。外の敵に一致団結する姿は良いもの。外敵の存在が内部の結束を固めるということは、仕事をしていてもあるよなあ。

淡々と語られる本書には実に魅力的な人々が多数出てくるけど、感情移入しづらい、ま、読んでてそのほうが気が楽ですけど。
しかし皆いづれは死ぬんですね。寿命を全うして平和に死ぬことが本人にとって幸福なのかどうかは別の問題かな。

本書のラストに王ミトリダテスの手紙があって、そこで書かれているローマ人はただの略奪者なんですね。ちょっとびっくりしました。
塩野さんの物語はローマ側から描かれていて、当然ローマびいきになってます。しかし戦いに負けた側から見るとローマ人は悪以外の何者でもないんだろうなあ。
あえてそういった視点も書いた塩野さんには、もっとそういう、逆の視点からのローマも描いてほしいものだ、と思いました。

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