2011年8月12日金曜日

テロリストのパラソル


8月10日読了。
ものすごく面白かったという記憶がありましたが、そうでもなかったです。
勿論面白かったけどね。

気づかず読んでましたがこの作家ってハードボイルドなんですね。
ヘミングウェイですね。
ミステリーの代名詞になってしまったのはチャンドラーかもしれないけど、ハードボイルドはあくまで文体。
簡潔で力強さがあり、テンポも良い。
ぐいぐい読ませるこの文章はこの作家の持ち味ですね。

ただちょっと細部が細かすぎる感じがしました。
主人公がアル中の中年男の癖に頭が回りすぎるくらい回って、実に細かい部分の矛盾を淡々と指摘するようなところがあります。
そこらへんのやり取りが面白さの大きな源でもあるんだが、ちょっと細かすぎ感もあります。
あと、終盤が一気すぎ感もありました。
謎を追っていくあたりはものすごく面白いけど、謎解きは淡々と終結処理してるだけのような感じが。

この点は松本清張が何かで書いてましたね。
推理小説は、ラストの謎解きが省けない限りは文学になれない、というようなことだったと思います。
砂の器も老刑事の執念の捜査のあたりは本当に面白いのに、ラストになって急にポワロみたいな灰色の脳細胞で勝負するような部分があって、違和感を感じたものでした。
この本にもそういうところがありますね。
ラストで会社に乗り込んでいくあたりでこの本の面白い部分は終わりですね。

と書きましたが充分面白い本です。
人が魅力的です。
冒頭で死んでしまった昔の恋人ですら充分魅力的なキャラです。
つくづく早世が惜しまれる作家ですね。

0 件のコメント:

コメントを投稿