2013年11月14日木曜日

アトランティスのこころ


あの、スティーブン・キングです
次に読むのは誰にしようか、塩野七生も読んどきたいし中山可穂をもう一作くらい、などと悩んでたときにふと浮かんだのがキングでした。膨大な作品群に比し私の読んだのはわずか数作品、ここらへんで手をつけておくか、と思い借りてみました。

・黄色いコートの下衆男たち
少年の日常に控えめに紛れ込んできた老人、非日常が少しづつ、徐々に徐々に紛れ込んできて頂点で超異常となり穏やかに収束。キングがテッドに語らせていた、内容と文章、いづれも素晴らしい稀有な小説の一つなのかもしれない。こんなすばらしい普通の長編が一冊の本の第1章にすぎないという離れ業、魔法使いキング、というところか。
・アトランティスのハーツ
学生生活の話、つながりはキャロル。下種男たちが素晴らしすぎてちょっと入りづらかったけど、読み終えてみるとこの作品も独立してよんでも傑作と言って良い。自由で責任がないだけに自分で自分を制御していかなければならない学生たち。無限の楽しみと厳しい抑制、戦争を背景にいろんな道を歩く学生たちを、アトランティスのハーツゲームとこころにかけてノスタルジックに描いた傑作。
・盲のウィリー
キャロルが重要なんですね。流されるようにして犯してしまった罪と戦争の傷跡を引きずって奇妙に生きていく男が絶妙な筆で描かれてます。
・なぜぼくらはヴェトナムにいるのか
サリー登場、キャロルの事件はやはり重要なモチーフですね。戦争の傷跡が痛々しい、ラストは癒しと、私は受け取りたい。
・天国のような夜が降ってくる
ここまでくると最後の話はキャロルかボビーに戻るのか、と想像してたら見事に二人とも。グラブが重要なモチーフだったのか。でも前の話のラストのグラブからのつながりは強引感もあるなあ、テッドの仕業ってことか??

中短編集という見方もなくは無いと思うけど全部読み終えた感想としてはやはり一つながりの作品。
でも無理して一つにつなげるために小細工してるようにも見える。最後の話以外は独立した話として読んだほうが楽しめそう。
短編として読んだときに一番楽しめたのは「ヴェトナム」。幻想と現実とスパッと切れるラストが見事。
「盲」は異常心理の文学作品としての香りを持っていて、これも傑作だと思う。
「ハーツ」はノスタルジックなこれも文学臭がただよう。
長編といって良い「下種男」は少年の成長の話かな、ある意味これがテーマとしては一番陳腐かもしれない。

魔術師キング、恐るべし。

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